淡海 話の小窓 Vol.3

『人は毎朝生まれ変わる』

 朝の文字を分解すると『十月十日』となります。“じゅうがつとうか”とも“とつきとうか”とも読めます。

“とつきとうか”と言えば、宿された新たな生命が母親の体内で成長する期間です。そしてこの世に誕生することになります。

こうしてみると“朝”という文字には、「人は毎朝生まれ変わる」との意味合いが込められていると思えます。私たちは毎夜眠るときにその日の命を終え、翌朝再び目を覚ます(今日の命が誕生する)ことを繰り返しながら、『私の人生』というひとつの命を生きています。

二十数年ほど前になりますが、郷里鹿児島で母の世話をしていた兄が肺がんを患い、六十二の若さで他界しました。その通夜で僧侶がこのような話をしてくれました。

『こうして大切な人が亡くなり、この世から消えていくことは本当に悲しいことです。しかし、今ここに生きている私たちも必ずその命を終える日が来ます。必ず終わる日が来るのです。けれども大方の人が“自分は明日もこれから先も生きているもの”と信じて疑わずに毎日を送っているのが実情でしょう。その分、今日一日の尊さをあまり真剣に受け止めずに、何となく過ごしてしまいかねないのです。

私たちは毎晩死に毎朝生まれ変わっているのですよ。今日という日は二度と戻ってこないのですから、今日の自分は明日にはいないのです。そして新しく生まれた今日の自分も今日一日しか生きられないのです。だから、大切にして尊く生きましょう』と。

ある割烹に、『希望に起き 感謝で働き 反省に眠る』と書かれた貼り紙がありました。ホテルでの修業を終えて自立するとき、師匠からいただいたとのことでした。

私と妻(同じ年齢)に草津市から後期高齢者医療被保険者証が届きました。改めて日一日が尊いものであることに思いを馳せ、「いま・ここを尽くす」生き方を心せねばと思うこの頃です。

 (草津市:谷迫 秀行)

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