第76回「京都。学ぶ会」 山中 源兵衛様(金属工芸「清課堂」七代目当主)
「金工における表現の探求」
長かった残暑が漸くおさまった、2024年9月30日(月)に、第76回目の例会をラボール京都で開催しました。今回は、金属工芸「清課堂」七代目当主の山中源兵衛様に、「金工における表現の探求」と題してご講演をしていただきました。参加者数は29名でした。
山中様は、1969年京都生まれの55歳で、堀川高校から立命館大学理工学部経由で、京都伝統工芸後継者育成コース鍛金終了後、家業である錫器・金属工芸品の製造に従事されました。2007年に七代目源兵衛を襲名され、金属工芸作家としても日本伝統工芸展を中心に活躍されています。京都金属工芸協同組合の理事長をされています。ご趣味は、トライアスロンとのことです。
講演は自己紹介から始まり、レジュメに沿って映像を使っての説明は大変分かり易かったです。最初の「清課堂のしごと」では、天保9年(1838年)に寺町二条で創業され、186年の歴史を持つ錫の器の専門店として今日に至ります。映像による錫製品の製造工程の説明では、手わざ「打ちもの」による鎚目が魅力的でした。
奈良時代に中国から入ってきた3つの錫薬壺(正倉院蔵)から明治時代の煎茶提籃茶器一色、祇園祭で使われている神具等の紹介がありました。
続く「当代源兵衛のしごと」では、現代に生きる工芸とはなんだろうか?と後世に伝えるために何をすべきか?の問題提起をされました。伝統工芸産業は、1980年頃は280万人の従事者が居て、5400億円の売り上げがありましたが、2016年では6万人、960億円の規模にまで縮小し、餃子の「王将」の年商に届かないと実態報告をされました。
清課堂では、90%以上が店頭販売で、輸出が約5%、オンラインが約3%で、売上がコロナ前から半減しているとのことでした。このような状況に対応するために、趣味・嗜好が多様化するのに対応して、デザインから製造販売、アフターケアまで一貫して行うことや、企業とのタイアップ、内外でのコラボ展示会等を紹介されました。長火鉢をワインクーラーにリノベーションされた商品紹介は、その眼の付け所に感心しました。
山中様ご自身が公募展(‘いまからまめさら’)を企画され開催されており、金属工芸を1.広く伝える2.発掘する3.ほめ称える4.売る5.繋げる ことを実践されています。次の「金工品の見どころ」では、鋳物(いもの)鍛物(うちもの)彫金(ほりもの)その他とあり、茶道具(茶釜)、仏教用具(おりん)、鉄瓶などを紹介されました。清課堂の現在の茶筒と80年前のものとの比較は大変興味深く、会員は手に取って味わっていました。
最後は、「表現と可能性」です。旧来の技術、表現にとらわれず、ロボットやAIにもできない新しい表現、用と美の探求・挑戦について、将来有望な5人の若い作家の作品を紹介されました。
Q&Aでは、珍しく5件程の質問がありました。錫は今は全て輸入に頼っていることや錫の酒器の味わい?錫の融点など面白い質問がありました。
最後に、古くから伝わる金属工芸が、現在及びこれからどのように扱われ発展して行くのかを見守って行きたいと強く思いました。その一歩として、是非未だの人にはお店を訪問して欲しいとお願いして講演会を終了しました。山中源兵衛さんに厚い御礼の拍手を送りました。
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