新年最初の例会を、1月29日(月)ラボール京都にて、(株)俵屋吉富の石原義清社長様に、『京菓子に向き合う』と題してご講演をしていただきました。俵屋吉富は、「京銘菓 雲龍」で有名な京菓子の老舗で、季節に相応しい生菓子を初めとして、多種多彩な和菓子を製造直販されております。創業は1755年で、260年あまり前の江戸中期に遡ります。「雲龍」が誕生して今年で100年になります。講師の石原義清様は九代目になり、今年還暦を迎えられます。本店は上京区室町通上立売上ルにあり、従業員数は約100名、工場は本社にあります。年商は約10億円とのことです。講演は、石原様の自己紹介から始まりました。中2から高校時代は野球部に、同志社大学文学部に入ってからは、父の勧めもあり家業に関連深い茶道部に入っておられました。卒業後は、名古屋の流通菓子問屋と伊勢の「赤福」で修業をされ、「おかげ横丁」の立ち上げ企画にも参画されたのちに実家に戻られ、1990年に専務取締役、2004年に代表取締役社長に就任されています。業界のリーダー的存在で公職を33も担っておられ、代表的なものとしては、京菓子協同組合理事長、一般財団法人ギルドハウス京菓子(京菓子資料館)理事長、京都商工会議所・常議員/食品・名産部会長,裏千家等茶道関係や能楽・京舞の役職、大本山相国寺(鹿苑寺・慈照寺)の信徒総代、その他有名な神社・仏閣の要職も勤めておられ、まさに八面六臂のご活躍ぶりです。出席者数は35名でした。
代表的銘菓の「雲龍」は、相国寺から命名され、寺に合うような力強い菓子を目指して、小豆、砂糖、寒天の材料で羊羹を生菓子風に、職人さんが一つづつ手巻きで作られています。小豆の産地(北海道、丹波)の違いで2種類、更に「白雲龍」もあります。また、お客様のニーズを取り込んで半棹のものも作られております。時代と共に、パッケージも変遷していることを知りました。1978年に、祖父(留次郎)・父(義正)が烏丸店の隣に、「京菓子資料館」を立ち上げました。ここでは京菓子や茶道の世界を総合的に紹介し、「見る・食べる・感じる」ことを体験できる施設です。日頃は、神社仏閣・各御家元・商工会議所・京菓子協同組合との関係を保ちつつ、お得意先の好みに合わせながら、老舗俵屋吉富の創作を加えて、菓子作りに邁進されています。一例として、お店の中に茶席を併設されて、茶の湯にふさわしい様々な京菓子を取り揃えておもてなしをされています。
次に、今の季節(1~4月)のお菓子を、カラー写真で34点を見せていただき、一つづつ解説を加えてもらいました。どれも色や意匠が優雅で、視覚や聴覚に訴える菓子の名前で、京の季節の生菓子の世界に一挙に引き込まれました。特に、「花びら餅」や「うぐいす餅」の由来、旧暦に合わせて作る習慣と今を取り込む気働きのバランスなど、専門家の知性と感性を感じさせる解説でした。また、お正月のお年玉として、特別に「東風」という生菓子をご用意していただき会員に配りました。その場で賞味する人や家に持ち帰る人に分かれましたが、大好評でした。
最後に、これからの活動として、直近ではコロナ明けのインバウンドの外人観光客に対する和菓子の訴求、そして2025年大阪万博への対応を挙げられました。これからも日本の和菓子が、国の内外に更に飛躍して行くための取り組みに大いに期待して、拍手でもって感謝と御礼に代えました。
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