36度の酷暑の中、7月24日(月)ラボール京都にて、「作陶45年~これまでのこと、これからのこと」と題して、奧村博美様を講師にお迎えして、69回目の講演会を開催しました。京都はこの時期、祇園祭一色になりますが、それに伴い街中の気温もぐんと上昇します。暑さのせいもあり、出席者数が29名と少なかったのは残念でした。奧村様は、1953年生まれで今年古稀を迎えられましたが、流石に芸術家らしく若々しい溌溂とされていました。生まれも育ちも京都で、塔南高校から京都市立芸術大学に進まれ、1978年に陶磁器専攻科を卒業。3年間は甲南女子高校の非常勤講師をされましたが、陶芸一本に絞られて、宮下善爾先生の仕事場の一角を借りて制作。1979年(25歳)に京都亀岡で工房を建て作陶生活に入られました。1996年(40歳)に京都精華大学から招聘があり大学教員(助教授)に就任され、陶芸家と教育家の二本立ての生活を歩まれます。大学には2020年まで勤められました。陶芸家としては、1980年から数多くの公募展に出品され、色々受賞されています。個展も1982年から今日まで、右手を怪我された時期を除いて、殆ど休みなく開催されており、内外に多くのファンを持っておられます。
先生のプロフィール紹介の後は、作陶45年間の「技法からの展開」という観点から、初期から今日までの様々な技法(制作過程)を時系列に紹介しつつ、そのステージごとの作品の変遷を映像で分かり易く見せていただきました。先生は「新たな技法を取り込み、技法に溺れず、技法に寄り添い、時には技法を弄んで生まれる姿を模索しながら制作してきた」と制作の信条を述べられました。1979年から現在までの14の技法を制作過程や出来上がった作品を映写して懇切丁寧にご紹介して頂きました。素人の陶芸好きにとっては、めったにない経験と勉強になりました。技法を挙げてみますと、轆轤、石膏型、紙型、染付から始まり;石膏印を回転させて模様を付ける方法とその延長になる象嵌器シリーズ;タタラ技法による白釉器;釉薬なしのタタラ技法での叩き紋;白熔化化粧、赤絵;1枚のタタラ板から形作る皺襞膚シリーズ(白熔化化粧);皺襞膚(磁土、黒熔化化粧);つまみ取った土を指で広げる皺襞の器(赤化粧);鉄釉による火焔器シリーズ;火焔壁;紐を粘土に押し当てて出来る形で「漣」作品;指先を使わずに成形する緊縛シリーズ 等々と多種多様で、作品からばかりでなくその制作過程の変幻自在さには驚くと共に、陶芸作品作りの創意工夫、奥深さに感嘆しました。私達が通常「陶磁器」から受けるイメージからは程遠い陶芸の世界を垣間見ることが出来ました。日本の陶芸が、世界的に見ても、古いものから新しいものまで、如何にハイレベルな位置にあるかも、奧村様の作品を通して改めて感じた次第です。私個人としては、会員さんに奧村さんの器などの身近な作品にも接して貰いたいし、実際に使って貰いたいと思いました。先生の代表的な技法の作品や工具を実物で見せていただきまして大変参考になりました。先生のこれからの益々のご発展とご活躍をお祈り申し上げます。本当に有難うございました。
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