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第63回「京都・学ぶ会」安藤敦亮(たいすけ)様(古陶磁愛好家)講演報告

 今回は、1978(昭和53)年京都生まれの44歳、まだお若いですが古陶磁が大好きで、コレクターでもあり研究家でもある、安藤敦亮(たいすけ)様にご講演をお願いしました。講師の紹介をいただいたのは、東山五条で「MOTTAINAIクラフトあまた」というクラフトショップを開いて居られる若本紀子様で、ご本人も聴講にお越し頂きました。
 鹿児島県出身の父と、佐賀県出身の母との間にお生まれになり、幼いころから自然とやきものに囲まれた環境に育ち関心を持つようになったと自己紹介されました。生まれて初めて自分で購入したやきものは、中学1年生の熊本旅行で購入した,小代焼の湯飲みとのことでした。
 社会人になってから自分の所得で物品購入ができるようになり、柳宗悦の「民藝」との出会い、民窯の古作品や廃絶窯の作品も関心対象になり、古物骨董にも手を伸ばされるようになり、以後、古美術・骨董店、露天市、ネットオークション等での購入経歴は17年に及びます。「あまた」主宰のイベントや講演会(「民藝茶会」)などを通じて、物品提供や講師をされています。主な収集対象は「抹茶碗」とのことです。

 講演用のプロフィールとレジュメは、16ページに及ぶもので、教科書のように話のストーリーに沿って丁寧に書かれており、講演会の後で読み返すとより一層理解が深まるものです。講演会の準備に大変な時間と労力を掛けていただいたことに感謝します。はじめに、やきものは、工芸品の中で経年劣化が一番少ないもので、一万五千年以上前に作られた縄文式土器が現在に至るまで壊れずに残されていることを認識した上で、その一例として鎌倉時代~南北朝時代(約650年前)の渥美半島で作られた「山茶碗」(やまじゃわん)を回覧されました。やきものにある後世に残っていく力を、触れてみて体感しました。そして、大切に扱い壊すことさえなければ、自分から子を経て孫を経てひ孫の世代までも姿と機能とを保ちうる工芸品です。そのことを意識して、身辺に置いて親しむ、あるいは座右の一品、二品としての「やきもの」の楽しみ方を提案されました。

 日本人は、世界的に見ても「やきもの好き」な国民性を持つといわれています。現在、多種多様な技術と作品を生み出す日本の陶磁器技術は、世界一最高の水準に到達していると言っても過言ではありません。

①「やきものの楽しみと鑑賞について」の項目では、最初に参考知識として、やきものの種別、六古窯、技法、使用目的による分類について説明がありました。なかでも、茶道文化のなかの「茶陶」の大きな存在は見逃せません。「民藝ブーム」の中で、継承されずに失われていった技術があり、古陶磁器においても再現が難しい技術がいくつもありますが、現代において再現に挑戦している作家は数多く居られます。それが却って古物=骨董・古美術の価値を高めていると言えます。

②「古物・骨董よもやま話,ホンモノ、ニセモノ、価格の見極めなど」では、「黒薩摩=黒もん」の見分け方のエピソード、「開運!なんでも鑑定団」での偽物、贋作の例の紹介がありました。「青銅仏三体」の回覧による真贋判定、平佐白磁土瓶(骨董でしか手に入らないものとしての例示)、三輪家九代・三輪雪堂作・瀬戸茶碗(掘り出しの例示)等は大変興味深い体験であったり、愉しい時間でした。

③「古物・骨董の入手手段色々、そして楽しみ方について」では、講師ご自身の収集対象の推移。変化を話され、現在の「抹茶碗」に行き着いたことを赤裸々に語られました。古物骨董の入手方法として、「弘法市」等の露店市、最も多用されているのがインターネットオークション、ヤフーオークションです。自分の身丈に合った入札の自己ルールを設けることの重要性、日頃から美術館や図録で名品や優品をなるべく多く観て勉強することが大事だと付け加えられました。そして、骨董・古美術店については、マナーを弁えて勉強をさせて貰う姿勢で、度胸を出して入ってみることです。

 この講演を聴いて、やきもの好きな人にはよりやきもの好きに、初心者にはこれを機会に一歩踏み出して、やきものを楽しむ世界に入って見て欲しいと強く思いました。私達の世代でも、まだまだ未知の世界があり、勇気を出して踏み出してみることによって、新しい発見があることを是非実践して、豊かなシルバー時代を愉しんで頂ければ幸いです。最後にお勧めの書籍の紹介がありました。講師へ大きな拍手を送って、御礼に代えさせていただきました。

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