がんについて
第3回目は、前回に続き第一製薬工業株式会社様「健康情報」および今回、新しく掲載利用の可能な国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」というWEBサイトのお話を中心に紹介します。
がんは、あらゆる病気のなかでも最も死亡率の高い病気で、長年日本人の死因第1位となっており、現在の統計では2人に1人は一生のうちに何らかのがんと診断される時代です。
近年、男女ともにがんにかかる人は増え続けており、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性62.1%・女性48.9%(2020年データ)、生涯でがんで死亡する確率は、男性25.1%(4人に1人)・女性17.5%(6人に1人)(2022年データ)となっております。
誰でも高齢になれば、がんになる確率が高くなり、解剖医によると、「老衰で亡くなった高齢者を解剖すると、ほとんどの人にがんが見つかる」と言う。これは、それまで悪さをしなかったがん、発見できなかったがん、すでにできていたがんと考えられます。長寿化が進む日本において、がんは決して他人事ではありません。
がんが恐ろしいところは、初期にはほとんど自覚症状がないということ、そのため健診などで発見されることが多く、発見されたときにはすでに進行していたというケースも少なくなく、がんは腸や肺、胃などの内臓だけでなく、血液や骨、皮膚など、全身のあらゆる場所に発生し、がんができる部位によって、その性質は異なっていると言われています。
日本人でかかる人が多いがんの種類をみると、最も多いのは大腸がんです。続いて肺がん、胃がんと続きます。男女別でみると、男性の1位は前立腺がん、2位は大腸がん、3位は肺がん。女性の1位は乳がん、2位は大腸がん、3位は肺がん(2022年データ)です。
いまや、がんは誰しもかかる可能性がある病気といえますが、その一方で、「がんの予防」につながる具体的な対策が科学的に解明されつつあるようです。
今回、健康寿命を延ばしていただくために、がんに関する情報やがんの予防法、生活習慣の改善・健康習慣の実践法などをご紹介します。ご参考にしていただければ幸いです。
以下、2WEBサイトより転載
出典:第一薬品工業株式会社「健康情報」
(1)がん対策を考えよう! 意外に知らないがんの真実
1981年以降、日本人の死亡原因の第一位となっているがん。日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡しています。
今回の健康情報では、日本人の国民病ともいわれるがんに関して意外と知られていない真実及びその予防方法をお伝えいたします。
がんとは?
私達の体は、約60兆個もの細胞から出来ています。そのうちの約1%が毎日新しく入れ替わり、6,000億個の細胞が死んで、新たに約6,000億個の細胞が細胞分裂により誕生しています。細胞分裂の際に、細胞の設計図にあたるDNAを毎日約6,000億回コピーしているのですが、私たちの体はこのDNAのコピーを失敗することがあり、がん細胞はコピーミスによって生み出されます。
多くの場合、コピーミスを起こした細胞は死んでしまいますが、あるDNAにコピーミスが生じると、細胞は死ぬことが出来なくなり際限なく分裂を繰り返すようになります。死ねない細胞(がん細胞)の誕生です。コピーミスによって、毎日5,000個ものがん細胞が生み出されている事が知られています。
がん細胞は死なずにどんどん増殖を続け、周囲の正常な組織に侵入し、しまいには血液やリンパ液の流れに乗り全身に移動。正常な細胞を駆逐していきます。
生み出されたがん細胞は、毎日全て退治される!
毎日5,000個ものがん細胞が生まれているのに、私たちは、なぜ、すぐにがんにならないのか?
その理由は私たちの体に、がん細胞を退治する働きが備わっているからです。それが免疫の働きです。免疫は、体外からやってくるウイルスや細菌などを退治するだけでなく、体内に出来た異常な細胞であるがん細胞も退治します。私たちの体内では、免疫を担う免疫細胞の活躍により、毎日5,000個全てのがん細胞が退治されているのです。
しかし、何らかの影響で免疫力が低下した時など、がん細胞を全て退治できず、生き残らせてしまうことがあります。この生き残りが増殖することでがんを発病します。
がん細胞、もしかしたら私たちの体の中にもういるかも・・・
生き残ったがん細胞は、ネズミ算式に増えていきます。1個が2個、2個が4個、4個が8個・・・・・10億個。1個から10億個までがん細胞が増えるのに10~20年ほどかかります。初期のがん(約1cm)は、約10億個のがん細胞で出来ているといわれています。つまり、今、発見されたがんの元になるがん細胞は10~20年前に生まれていた。また今現在、私たちの体中で10年後、20年後にがんとして発見されるがん細胞が生まれて育っているかもしれないといえます。
高齢化でがんの発病率が増えた理由
高齢化に伴って、日本人のがんの発症者数や発症率は増加しています。その原因として以下が考えられます。
長生きすることは、1日6,000億回のコピーを続けることであり、コピー回数が増えることでコピーミス(がん細胞が生まれた数)が増える。
高齢化により免疫力が衰えていくことが知られています。免疫力の低下により生まれたがん細胞が生き残る可能性が高くなります。
長生きすることで、過去に生き残ったがん細胞が大きく育つ時間ができる。
日本は、世界一の長寿国になったことで「世界一のがん大国」になったと考えられています。
がんを予防するには?
がんは、免疫の働きを逃れて生まれ、増殖していきます。がんを予防するには免疫力を下げない(がん細胞を生き残らせない、増殖し難くする)生活習慣が大切です。免疫力低下を避ける生活など、がんを防ぐ生活習慣としてがん研究振興財団より、下記の12ヶ条(2011年公開)が挙げられています。生活習慣に注意してがんを予防しましょう。
■国立がん研究センターが運営する公式サイト「がん情報サービス」について 国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」というWEBサイトは、日本の法律である「がん対策基本法」 (平成18年法律第98号)に基づいて始まったもので、科学的根拠に基づくガイドラインや刊行物を情報源として、全国の多くのがんの専門家や患者・市民など、さまざまな方々の協力の下、作成。医師・看護師・薬剤師などの複数の専門家がつねに査読して内容をチェックし、また、患者や市民の意見も取り入れ、「患者さんにとってつらい表現になっていないか」「わかりやすいか」ということも確認し、患者・家族・市民むけに発信されています。がんの治療や療養生活、がんの統計、医療機関など多くのわかりやすい情報が提供されています。
「がん情報サービス」では、がんに関連するさまざまな情報を紹介されています。世の中にはたくさんのがんの情報がありますが、がんという病気について知りたいときには、まず、「がん情報サービス」で自分の状況に合った確かな情報を確認できます。 ご参照いただきご参考にしてみてください。 《がん情報サービスサイト》
(2)科学的根拠に基づくがん予防~がんになるリスクを減らすために~
《がん情報サービスサイト》 国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん予防」
1.がん研究から「がん予防」へ
日本では毎年、たくさんの人ががんになっており、日本人の2人に1人が一生のうち一度はがんになるというデータがあります。がんは日本人にとって身近な病気で、その予防は多くの人の関心を集めるテーマです。がん予防についての研究からは、がんと生活習慣病・環境との間に深い関わりがみられていますので、生活習慣を改善することで誰でもがん予防に取り組むことができます。
このページでは、日本人を対象とした研究結果から定められた、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法(5+1)」についてまとめています。
1人でも多くの方がこのページをご参照いただき、より健康的な生活習慣を生活に取り入れていただけるように願っています。
2.日本人におけるがんの要因
図1は、日本人のがんの中で、原因が生活習慣や感染であると思われる割合をまとめたものです。「全体」の項目に示されている、男性のがんの43.4%、女性のがんの25.3%は、ここにあげた生活習慣や感染が原因でがんになったと考えられています。
図1 日本人におけるがんの要因
3.科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)」
国立がん研究センターをはじめとする研究グループでは、日本人を対象としたこれまでの研究を調べました。
その結果、日本人のがんの予防にとって重要な、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの改善可能な生活習慣に「感染」を加えた6つの要因を取りあげ、「日本人のためのがん予防法(5+1)」を定めました。
これから紹介する5+1のがん予防法を実践することで、あなた自身の努力でがんになるリスクを低くしていくことが可能です。5+1のがん予防法をどのように実践すればよいのか、具体的に説明していきます。
1)禁煙する
①たばこは吸わない
日本人を対象とした研究から、たばこは肺がんをはじめ、食道がん、膵臓すいぞうがん、胃がん、大腸がん、肝細胞がん、子宮頸がん、頭頸部がん、膀胱ぼうこうがんなど、多くのがんに関連することが示されました。たばこを吸う人は吸わない人に比べて、何らかのがんになるリスクが約1.5倍高まることが分かっています。
②他人のたばこの煙を避ける
受動喫煙でも肺がんや乳がんのリスクは高くなります。たばこは吸う本人のみならず、周囲の人の健康も損ねます。
禁煙はがん予防の大きく確実な一歩。
吸っている人は禁煙し、吸わない人はたばこの煙をなるべく避けて生活しましょう。
◆禁煙の方法~ひとりでやろうとせず専門医に相談~
まずは喫煙のリスクを理解することから始めましょう。
禁煙外来など専門家と共に取り組むことも成功への近道です。要件を満たしていれば、保険診療で禁煙補助薬を使った禁煙プログラムなどの禁煙治療を受けることができます。地域の医療機関を探し、ぜひ禁煙に取り組んでみましょう。
2)節酒する
日本人男性を対象とした研究から、1日あたりの平均アルコール摂取量が、純エタノール量換算で23g未満の人に比べ、46g以上の場合で40%程度、69g以上で60%程度、がんになるリスクが高くなることが分かりました。
特に飲酒は、肝細胞がん、食道がん、大腸がんと強い関連があり、女性では男性ほどはっきりしないものの、乳がんのリスクが高くなることが示されています。女性の方が男性よりも体質的に飲酒の影響を受けやすく、より少ない量でがんになるリスクが高くなるという報告もあります。
お酒を飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり23g程度までとし、飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。
◆飲酒量の目安(1日あたり純エタノール量換算で23g程度)
お酒を飲む場合は、以下のいずれかの量までにとどめましょう。
- 日本酒 … 1合
- ビール大瓶(633ml) … 1本
- 焼酎・泡盛 … 原液で1合の2/3
- ウィスキー・ブランデー … ダブル1杯
- ワイン … グラス2杯程度
3)食生活を見直す
これまでの研究から、「塩分や塩辛い食品のとりすぎ」「野菜や果物をとらない」「熱すぎる飲み物や食べ物をとること」が、がんの原因になるということが明らかになっています。塩分を抑え、野菜と果物を食べ、熱い飲み物や食べ物は少し冷ましてからとるという3つのポイントを守ることで、日本人に多い胃がんや、食道がん、食道炎のリスクが低くなります。
①減塩する
いくら、塩辛などの塩分濃度の高い食べ物をとる人は男女ともに胃がんのリスクが高いという結果も報告されています。
塩分を抑えること、すなわち減塩は、胃がんの予防のみならず、高血圧、循環器疾患のリスクの低下にもつながります。
◆食塩摂取量の目安
日本人の食事摂取基準(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)では、1日あたりの食塩摂取量を男性は7.5g未満、女性は6.5g未満にすることを推奨しています。塩辛い食品、食塩の摂取は最小限にするよう心がけましょう。
②野菜と果物をとる
食道がんについては、野菜と果物をとることで、がんのリスクが低くなることが期待されます。また、胃がんおよび肺がんも、リスクが低くなる可能性があります。なお、食道がんは喫煙・飲酒との関連が強いことが分かっていますので、禁煙と節酒を心がけることがまず重要となります。野菜と果物をとることは、脳卒中や心筋梗塞をはじめとする生活習慣病の予防にもつながるので、できるだけ毎日意識的にとり、不足しないようにしましょう。
◆野菜と果物の摂取について
野菜や果物不足にならないようにしましょう。
厚生労働省策定「健康日本21(第二次)」では、1日あたり野菜を350gとることを目標としています。果物もあわせた目安としては、野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分を食べることで、おおよそ400gが摂取できます。
③熱い飲み物や食べ物は冷ましてから
飲み物や食べ物を熱いままとると、食道がんのみならず、食道炎のリスクを上げるという報告が数多くあります。飲み物や食べ物が熱い場合は、少し冷まし、口の中や食道の粘膜を傷つけないようにしましょう。
それにより、食道のがんのリスクが低下することが期待できます。
◆熱い飲食物について
熱い飲み物や食べ物は、少し冷ましてから口にするようにしましょう。
4)身体を動かす
仕事や運動などで身体活動量が高い人ほど、がん全体の発生リスクが低くなるという報告があります。
身体活動量が高い人では、がんだけでなく心疾患のリスクも低くなることから、普段の生活の中で無理のない範囲で可能なかぎり身体を動かす時間を増やしていくことが、健康につながると考えられます。
①活発な身体活動によりがんになるリスクは低下します
国立がん研究センターの研究報告によると、仕事や運動などで身体活動量が高い人ほど、何らかのがんになるリスクが低下していました。がんの部位別では、男性では大腸がん、女性では乳がんにおいて、身体活動量が高い人ほどリスクが低下しました。
②推奨される身体活動量
では、実際にどれくらい身体を動かすとよいのでしょうか?
厚生労働省は、「健康づくりのための身体活動基準2013」の中で、18歳から64歳の人の身体活動について、“歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと”、それに加え、“息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと”を推奨しています。
同様に、65歳以上の高齢者については、“強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと”を推奨しています。また、すべての世代に共通で、“現在の身体活動量を少しでも増やすこと”“運動習慣をもつようにすること”が推奨されています。
◆推奨される身体活動量の目安
18歳から64歳:
歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行いましょう。
また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分行いましょう。
65歳以上の高齢者:
強度を問わず、身体活動を毎日40分程度行いましょう。
5)適正体重を維持する
これまでの研究から、肥満度の指標であるBMI※値が、男性は21.0~26.9で、女性は21.0~24.9で、がん死亡のリスクが低いことが示されました。
※ BMI(Body Mass Index):肥満度を表す指標です。値が高くなるほど、肥満度が高いことを表します。
BMI値=(体重kg)/(身長m)2
①太りすぎ、痩せすぎに注意
中高年の日本人を対象に行われた研究報告をまとめ、がんによる死亡のリスクと、総死亡(すべての原因による死亡)のリスクが、BMI値によって、どう変化しているかをBMI値23.0~24.9を基準(1.0)としてグラフに表すと、図2のようになりました。
図2をみると、男女とも、がんを含むすべての原因による死亡リスクは、太りすぎでも痩せすぎでも高くなることが分かります。
がんの死亡リスクに関しては、男性では肥満よりも痩せている人の方が高くなりました。ただし、たばこを吸わない場合には、痩せていてもがんの死亡リスクは高くならないことが報告されています。
女性においては、がんによる死亡リスクはBMI値30.0~39.9(肥満)で25%高くなりました。特に閉経後は肥満が乳がんのリスクになることが報告されていますので、太りすぎに注意しましょう。
健康全体のことを考えると、男性はBMI値21~27、女性は21~25の範囲になるように体重を管理するのがよいようです。
◆BMI値の目安
男性はBMI値21~27、女性はBMI値21~25の範囲になるように体重を管理するのがよいでしょう。
6)「感染」もがんの主要な原因です
日本人のがんの原因として、女性で1番、男性でも2番目に多いのが「感染」です。表1のようなウイルス・細菌感染と、がんの発生との関連があるとされています。
いずれの場合も、感染したら必ずがんになるわけではありません。それぞれの感染の状況に応じた対応をとることで、がんを防ぐことにつながります。
- 地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けましょう。感染している場合は専門医に相談し、特にC型肝炎の場合は積極的に治療を受けましょう。
- 機会があればピロリ菌の検査を受けましょう。定期的に胃がんの検診を受けるとともに、除菌については利益と不利益を考えた上で主治医と相談して決めましょう。
- 肝炎ウイルスやピロリ菌に感染している場合は、肝細胞がんや胃がんに関係の深い生活習慣に注意しましょう。
- 子宮頸がんの検診を定期的に受け、該当する年齢の人は子宮頸がんワクチンの定期接種を受けましょう。
- これらの感染について心配なことは、医療機関やがん相談支援センターに相談しましょう。
ウイルス・細菌感染と、がんの発生に関する詳しい情報は、「がんの発生要因」をご覧ください。
4.5つの健康習慣の実践の効果
実際に、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの改善可能な生活習慣に気を付けて生活している人とそうでない人では、将来がんになる確率はどれくらい違うのでしょうか。
国立がん研究センターでは、日本全国の11の保健所の協力を得て、調査開始時点で年齢40歳から69歳の男女、総計140,420人を対象に、生活習慣とがんやほかの病気の罹患りかんについての追跡調査を実施してきました。その結果、この5つの健康習慣を実践する人は、0または1つ実践する人に比べ、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低くなるという推計が示されました(図3)。
5つの健康習慣を実践することでがんリスクはほぼ半減します。できそうなことから取り組み、1つでも多くの健康習慣を身につけていきましょう。
– – – – – – まとめです - – – – – –
構成:光藤 富雄
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