『新』枚方発見 : 第5回「市立ひらかた病院」新型コロナウイルスとの闘い

【新 枚方発見について】

2023/ 6/ 6 作成

■「市立ひらかた病院」新型コロナウイルスとの闘い

今回は、枚方市出前講座として、「市立ひらかた病院」白石由美 副院長兼看護局長から、「当院における新型コロナウイルスの闘い!」と題して、支部HP委員4名と番匠市議で「市立ひらかた病院」に伺い、お話をお聞きしました。

市立ひらかた病院での対応実績:陽性患者 1,851名、疑似(陰性)患者 262名
 挿管患者 45名、死亡患者 66名、発熱外来 20,613件(2023年5月7日 現在)

市立ひらかた病院 白石 由美
副院長兼看護局長

★「市立ひらかた病院 沿革」をご覧になる方は、【沿革】をクリックして下さい。もう一度クリックすると閉じます。

  • 昭和24年(1949年)・・・旧禁野火薬庫の跡地を使用して「市立枚方市民病院及び伝染病病院 開設。
    (ジフテリア・赤痢・腸チフス・天然痘などを受け入れての医療)
  • 昭和25年(1950年)12月・・枚方市特別会計国民健康保険直営市民病院が開院。(内科・外科)病床数26床 職員21名
  • 昭和34年(1959年)・・・・未熟児センターの指定
  • 昭和35年(1960年)1月・・ 市立枚方市民病院に改名。
  • 昭和37年(1962年)7月・・病院第一次増改築工事完成(病床数147床 職員99名)
  • 昭和45年(1970年)11月・・救急指定病院の指定。
  • 昭和61年(1986年) 7月・・夜間救急診療始める
  • 平成11年(1999年) 4月・・第2種感染症指定医療機関病院
  • 平成15年(2003年) 4月・・医療安全管理者を設置し、安全管理体制の充実
  • 平成26年(2014年) 6月・・新病院開設。市立ひらかた病院に改名
  • 平成28年(2016年) 4月・・大阪府がん診療拠点病院の指定。
  • 令和 3年(2021年) 3月・・地域医療支援病院の承認
  • 令和 4年(2022年) 7月・・大阪府小児医療センターの指定

現在:市立ひらかた病院は、北河内(枚方市・交野市・寝屋川市・守口市・門真市・四条畷市・大東市)7市(約120万人)をカバーする2次医療圏唯一の公立医療機関 病床数335床(感染病床:通常8床 最大43床)

「市立ひらかた病院」の経過

 武漢で新型コロナ感染症が発生した当時は、対岸の火事のような雰囲気であった。
しかし新型コロナ日本上陸(ダイヤモンド・プリンセス号)乗客乗員3,713人のうち約2割の712名が感染し、14名死亡確認され、日本列島に不安が渦巻いた。

 国より感染症指定病院に新型コロナ患者の受け入れ要請があり、第2種感染症指定医療機関病院としての「使命」と「不安」(どうすればいいかわからない)が渦巻いた。
市立ひらかた病院の理念は『心のかよう医療を行い、信頼される病院』であるが、「医師が受け入れ拒否」「看護師や他の職員に不安感」があり、職員全体会議を頻繁に開催した。

2020年1月31日「第2種感染症指定医療機関病院としの使命を果たし抜く!」という強い意志の下、中国帰国者の重症患者を市立ひらかた病院での受け入れを決定。

 市立ひらかた病院作成の動画を視聴(当時、枚方市の各部署の協力や市長・市議会への要望時に活用)
※なつかしいが、厳しかった状況が思い出される。

 2020年3月「ライブハウスのコロナ患者の受け入れ」で感染病床8床が一瞬に満床となったが、軽症でありコロナの医療ができると実感できた。
マニュアルの作成・緊急受け入れ体制を整備・防護服の着脱シミュレーションの実施・検査手順の見直しなどを行い、患者さんの受け入れのために医師・看護師・他コメディカルと試行錯誤を重ねた。

 日常的に医療職へのハラスメント(心ない暴言・態度)を受け、悔しい思いをした。
(例)バスに乗るな・保育所に連れてくるな・市立ひらかた病院で働いている人や など

入院患者の年齢構成

【4波】50歳代(18.2%)、60歳代(18.9%)、70歳代(16.1%)、80歳代(19.6%)

【7波】10歳未満(38.4%)、80歳代(16.0%)

第4波では、重症患者が急増「命を守り抜くために!」

 「受け入れ先が見つからない・患者を助けたい」ということで枚方寝屋川消防組合の救急隊長・署長が号泣するまでの事態となった。在宅死『0』を合言葉に、コロナ患者を受け入れ、枚方寝屋川消防組合との連携し、感染病棟に救急隊枠を確保した。
使命を果たし貫く覚悟と医療職・スタッフの協力で、以下の対応を行い7月下旬~9月上旬のピーク(重症患者が 43床)を乗り越えることができた。

  • 大阪府入院フォローアップセンターの力が強く、自分たちで入院を決められない状況でしたが、全員のがんばりでフォローアップセンターからお褒めの言葉をいただいた。
  • 心電図モニターが足りない、入ってこない、人工呼吸器が足りない状況となったが、
    「心電図モニター7台を配置し、全入院患者のモニタリングに努める」「8床すべてをHCU(高度治療室)として稼働させ、人工呼吸器の挿管患者19名に対応」
  • afterコロナ病院を確保し対応したため、受け入れ患者数を増やせた
    大阪府入院フォローアップセンターと連携しながら、交野病院と福田総合病院など9病院を確保し、30名を転院できた。さらに、ひらかた病院でも一般病棟へ6名転棟対応し、ゴールデンウィーク中に42名の受け入れを実現。
  • 感染病棟看護師長から、「この部署に新人看護師が配属されないのはおかしい(差別ではないか)」と強い要望があり、過去の経験・実績を踏まえ、新人看護師の配属を決定した。
  • 重症度に合わせた人員配置(新人看護師の入職と同時期ではあったが2週間で120名以上を増員)

第7波では、小児・発熱外来の急増

 第7波では、大阪府で小児患者を受け入れる医療機関が少なく、北河内2次医療圏だけでなく、高槻市などの三島地区、大阪市からも多くの小児患者を受け入れることとなった。そのため病床を増やすなどの対応を実施し、大阪府下でも、小児受け入れ実績で第2位となり、誇りを持てた。
また、医療職の感染拡大(家庭内感染などで職員の30%感染)という状況の中、発熱外来患者数が増加し8月15日には、131人に達した。病院内では待ち時間が長くなり怒号が飛び交う状況にとなり、病院機能を維持することに苦慮したが、職員総出でコロナ患者に対応した。

看取り

 通常「病院での看取り」は、ご家族・医療職共に、故人の死に対して時間をかけて受け入れる。
しかし、「コロナ患者の看取り」は、看護師たちで納帯袋にご遺体を入れ、納帯袋のまま棺にご遺体を入れ、見送ることになった。
そういう状況で看護師の「心」が壊れる(看護師たちが精神不安定になる)こととなった。
「ご家族に会わせられないことがつらい」「納帯袋へご遺体を入れるのは初めて」など

感染病棟での寄り添う看護を試みて(生前面会の試み)

 面会するご家族に「タイベック(防護服)」を装着することはたいへんだったが、「最期に顔を見られてよかった」「入院中も面会時間を作ってくださり感謝」「状態が悪化した時に合わせていただき感謝の気持ち」「最期まで会えて本当に良かった」などの言葉をいただいた。

医療・看護の現場から、今伝えたいこと

 「医療者である私たちは、命の大切さ、そして看護とは何かを問い続けています」
「afterコロナは、心が折れそうな時、看護師にとって看護の新たな役割と可能性を示してくれると思います。また、私達はその気づきを若い看護師たちに伝えています」


【取材を終えて参加者の感想】

    • 北河内2次医療圏だけでなく、距離的に近い高槻市の患者さんも多く対応された。枚方市立でありながら心の葛藤もあったようで頭が下がる思いです。
    • 市立ひらかた病院での2020年からの3年間に渡る新型コロナウイルスとの現場での壮絶な闘いをきかせてもらいました。
    • 第7波オミクロン時が職員の30%が感染し、また患者の多くは小児患者で一日130人の患者さんに対応しなければならなかったのは大変な時期であったと感じました。
    • 救急隊長・署長から「病院の受け入れがない」という涙の訴えなど現場での連携のお話は感動しました。
    • 小児患者=市立ひらかた病院との見方をされているとの事、素晴らしい。
    • 「看護師だから近寄らないほうが良い」との心無い言葉を耳にされたとの事、感謝こそされこのような仕打ちがあった事に驚いた。
    • 一番つらかったのは、勤務自体ではなく、コロナ感染症の病院の人・家族だという目で見る人が多くいたことです。ハラスメントは大いに反省すべき点です。
    • このような凄まじい現場の話は、枚方市民全員がきいて、前述のハラスメントなどは皆無になるようにしなければならないと思いました。
    • このご苦労を、もっと枚方市民に知っていただくべきだ。その為に枚方南支部HPがお役に立てたら良いと感じた。
    • 「心のかよう医療」の理念を実現するよう、職員間の創意工夫での対応(家族の看取りなど)がされていた。
    • 重篤な方の看取りを少しでも家族の方に立ち会わせてあげたい気持ちが伝わり涙が出そうでした。

★「新 枚方発見」では、「枚方の新名勝・新施設など」を取材しています。取材してほしい「枚方の新名勝・新施設など」がありましたら、HP委員・支部役員にご連絡ください。あなたに代わって取材します。

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