”人の心を活写する書に魅せられて”
枚方市東香里3丁目在住
2014年3月12日 取材
1. プロフィールと動機
秋野さんは山形県のご出身で、1930年(昭和5年)お生まれの83才。1953年(昭和28年)松下電器入社、本社資材・管財・広報等の業務を歴任、ラジオ(事)や大阪(営)勤務を経て、1990年(平成2年)関西日蘭協会事務局(*1) 勤務を最後に定年退職された。
現役時代にお寺参りされた折に、山門などに掛かっている書に感銘を受け、魅せられたということである。「あんな字が書けたらいいな~」が書道を始めたきっかけ、1977年(昭和52年)に「書道研究温知会」(*2) に入門以来37年、各級・各段を順調に昇格、定年後も本格的に研鑽を重ね、1995年師範科に昇格され人に教授できる立場になられた。以後2001年に研究科、さらに本年2014年1月に最高位の専門科に昇格された。雅号は「秋野秀山」と称されている。
(*1) 関西日蘭協会
松下電器とオランダ・フィリップスが合弁関係にあった縁で、1959年(昭和34年)松下幸之助氏が創立。関西の財界、学会、官界の人々や関西在住のオランダ人を会員として、毎年総会等を通じて交流を重ね、日蘭両国の文化、経済、国情への理解を深める活動が行われている。事務局はパナソニック本社内にある。
(*2) 書道研究 温知会
1924年(大正13年)に神郡 晩秋により創立された古参の書道団体。約90年にわたり日本の伝統文化である書道の発展に貢献。本部は東京で全国に支部があり、秋野さんは松電支部(支部長:前田清堂)所属。日本に書道団体は数多くあり、温知会は中程度の規模。機関誌「なにはづ」は創刊から90年を超え、日本では最も古い書道競書雑誌の一つ。漢字・仮名の古典を重視。
2. 日常活動の概要
秋野さんは「自然の心を人に伝えるのが書」と言われた空海(弘法大使)の言葉を何度か口にされ、書の魅力は、音楽のようなリズム感を伴って、渓谷から水が流れるような筆使い、濃墨と薄墨のめりはり・バランスなどが大切と強調された。そのためには(温知会の練達技法である)唐時代の漢字の古典や平安朝の仮名の古典を、懸命に何度も写すことで基本ができるとされ、いわゆる「臨書」を重視されている。
基本は古典にあり、そこから独自のものを創り出す。これも書の大きな魅力の一つのようだ。温知会の機関誌「なにはづ」に毎月規定課題が提示され、秋野さんは「臨書・漢字半紙・かな半紙・漢字条幅(*3)・かな条幅・一字書」の6書を出品し、高い入選率を誇ると共に、きめ細かな講評を楽しまれている。また12月の「温知会書道展」にも殆ど毎年出品されている。
温知会以外では「なにわ会書作展」「高野山競書大会」にも毎年出品。「高野山競書大会」での入選は何度もされていたが、2013年は待望の入賞(金剛峯寺賞)をされた。また「毎日書道展」(*4)でも過去4回入選を果たされている。これまで3人の先生の指導を受けてこられ、週末以外は1日平均4~5時間、筆を染めておられる。
(*3) 条幅
一般に半切(はんせつ/136cm×35cm)のことを意味し、床の間などに飾られる掛け軸の大半が、この大きさである。
(*4) 毎日書道展
書道の公募展は、日展、日本書芸院展、毎日書道展、読売書法展など全国各地で数多く開催されているが、毎日書道展は応募総数が3万を超える日本最大規模の公募展
3.活動記録
ご案内頂いた2階の書斎には、綺麗に洗って整理された多くの種類の筆や、文献、大事な紙がきちんと引出しに整理されていた。取材の終盤には「書いてみましょうか !?」と気軽に準備して、取材陣の我々の前で「かな条幅」の書を披露し解説も頂いた(トップ写真)。下記に最近の入賞作品の一部を紹介させて頂く。
4.今後の抱負
「美しい書の創造を目指し、日々感謝しつつ、臨書を重点に一層の精進を重ねて行きたい」と熱く語られていました。
<取材:梅原、吉川、大熊、石川、倉橋 HP作成:吉川 WP編集:吉川>